「寄り添う」とはどういうことか
おはようございます。東京・練馬の税理士、村田龍矢です。
今日は、「寄り添う」ということについて。
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よくある表現
「クライアントに寄り添ったご対応をいたします」
サービス業でよく見る表現ですね。
でも、この寄り添うという言葉。どういう意味なんでしょうか?
クライアントの要望や意思をきちんと聴いて対応するとか、
クライアントに説明を尽くすとか。
色んな意味合いが含まれているように思います。
私がかつて経験した調査対応案件で、「私どもに寄り添っていただけるのでしょうか?」と言われたことがあります。
その案件は、
- 売上の集計誤り
- 経費の過大な計上
- 証拠書類の破棄
しかも、これらについて以前の税務調査で是正を指示されていたにもかかわらず、です。
お話を伺った際に、
「これは厳しい対応になるぞ」
と予感しました。
そこで、私自身もできる限りの状況を挽回するための方策をお話しつつ、調査は厳しいものになりますよ、とも伝えたのです。
クライアントを全肯定すること?
その際にクライアントから言われたことが、先ほど書いた言葉。
結果、失注しました。
もちろん、調査がどのように行われたのかはわかりません。他の調査対応が上手な税理士さんが何とかしてくれたのかもしれませんね。
いや、どうしてあげればよかったのかなと。
「大丈夫ですよ。売上とか経費が間違っていても問題ないですよ。書類を捨ててしまっても、何とかなりますよ。」
とか言えばよかったのでしょうか?
クライアントの状況を全肯定し、これをお伝えすれば、その場ではご安心はいただけるでしょうね。
ええ、「その場」では。
でも、実際に税務調査が始まると、調査官は「それでいいですよ」とは間違いなく言いません。
しかも、前回の税務調査で指摘されたことが全く改善されていない。
はっきり言って、お話にならないのですよ。この状況は。
であれば、税務署に代わってクライアントに厳しく指導し、何だったら税務署以上に厳しい対応を取り、申告誤りを速やかに是正し、以降同じ対応とならないように方策を考える。
これが「クライアントに寄り添う」ということではないのでしょうか?
時には厳しくも
税理士だからと言って、何でもできるわけではありません。
明らかに申告が間違っているのに、それを押し通すことはさすがにできないのです。
税理士としては、正しい申告書を作るようにフォローをしなければなりません。
クライアントを全肯定して寄り添ったことにしてしまうと、その状態が基準となってしまいます。
そこから本来の正しい申告へと是正していくのは大変でしょう。
だからこそ、一番最初の時点で、
「この申告はマズイですね」
「書類を捨ててしまっていると、厳しいものになります」
「前回の調査で改善を指導されたことを放っておいてしまうと、今回の調査では申し開きができないですよ」
という厳しい現実をお伝えしています。
今この状態が間違ってますよ、ときちんとお伝えしなければなりません。
もちろん、その状態をしっかり認識していただいて、正しい申告内容に修正したいというお話をいただければ税理士として全力でご協力します。
このような対応こそ、クライアントに「寄り添う」ということではないのでしょうか。
【編集後記】
昨日は朝から栃木県へ出張。
電車内でブログの下書きとオンライン研修の視聴。
現場近くの定食屋でモツ煮とラーメン。
午後からはクライアントと面談し、クラウド会計の設定とExcel会計入力についてレクチャー。
夜半帰宅し、ブログ更新。