売上1000万の「軽い調整」が招く悲劇

おはようございます。東京・練馬の税理士、村田龍矢です。

今日は、売上1000万の「軽い調整」が招く悲劇、というお話。

売上1000万円の壁と「軽い気持ちの調整」

昨日のブログでは、申告をごまかすと「所得税・住民税・国保・事業税」の怒涛の連続コンボがやってきて、自分や家族を巻き込んで大変な事態になる、というお話をしました。

しかし、実は事業者を待っている恐怖は、まだ別にあるのです。

それが、「消費税」です。

事業者の方ならご存知の通り、売上が1000万円を超えると、その2年後に消費税を申告する必要が出てきます。

消費税の負担は決して軽くありません。(私自身も)

そのため、「なんとか売上が1000万円を超えないように」と、意図的に売上を抜いたり、翌年に回したりして「軽い気持ちで調整」をして申告する方がいます。

「ちょっと売上を抜いて、900万円台にしておけば消費税は免除される。バレなきゃいい」

「ごまかしている売上も200万円、300万円程度だから、税務署に言われたら直せばいい」

この軽い気持ちが、後にとんでもない、本当に「取り返しのつかない」事態を引き起こします。

恐怖:売上に「ダイレクト10%課税」

税務調査が入り、抜いていた売上が見つかると、どうなるのか?

まず、他の経理ミスとは明らかに違う扱いになります。

「無申告」

本来提出しなければならない消費税の申告書を出していなかった、という意味です。

単なる経理ミスで修正する場合と、違うのです。

まずもって、本来の税額に最大50%もの重い罰金が上乗せされます。(連続無申告の場合の重加算税)

しかし、最も恐ろしいのはここからです。

通常、消費税は「売上にかかった消費税」から「経費にかかった消費税」を差し引いて計算します。

しかし、この差し引きを受けるためには「帳簿の作成とインボイスの保存」が絶対条件です。

「自分は消費税関係ないから」と帳簿を作っていなかったり、インボイスを捨てていたりした場合、調査の現場では情け容赦のない処分が下されます。

「要件を満たしていないため、経費分の差し引きは一切認めません」

つまり、税抜きの売上金額に対して、ダイレクトに10%の消費税が課せられるのです。

税抜きの売上が1200万円なら、経費がいくらかかっていようが関係なく、まるまる120万円、そこに最大50%の罰金が乗っかってきます。(180万円)

しかも、最大で7年分・・・。(1260万円)

この「天文学的」な金額を前にした時、事業者は怒るでも泣きつくでもなく、ただただ「絶句」してしまうのです。

この他に、所得税・住民税・個人事業税、そして国民健康保険料もやってくる・・・。(延滞税もあるよ)

これはもう、人間やめるしかないですね(ニッコリ)

必要な情報を知らなかった「本当の悲劇」

私がこのケースで一番悲惨だと思うのは、ペナルティの重さではありません。

「必要な知識」さえ持っていれば、この最悪の事態は避けられたということです。

もし、せめて「簡易課税」の届出を出していればどうなっていたか。

簡易課税であれば、実際の経費の領収書がなくても、事業区分に応じた「経費割合」で消費税を計算できます。

つまり、帳簿がなく領収書を捨ててしまっていても、売上へのダイレクト課税という致命傷だけは避けられ、「なんとかなった」のです。

コソコソとごまかすことばかりに気を取られ、自分を守るための「必要な知識」を知ろうとしなかった。

その「落ち度」が、自らの退路を完全に断ち切り、事業と生活を終わらせてしまう。

これが一番の悲劇です。

目先の税金を免れようとする「調整」は、絶対にやってはいけません。

正しい知識を持ち、堂々とルールを守って申告すること。

結局、王道が一番です。

【編集後記】

昨日はお出かけし浅草で会合に参加。

帰宅後、ブログ更新。

【筆者紹介】

 

 

 

 

 

 

 

 

【国税OB】の税理士・村田龍矢        (Tatsuya Murata)。練馬区を拠点に、個人事業主や経営者に向け、難解な税金や実務の仕組みを分かりやすい言葉に「翻訳」して発信中。税務署側の視点と実務経験を活かした、安全で確実な税務サポートと、経営者の時間を奪わないスマートな非同期コミュニケーション(メール・チャット特化型)を得意とする。