税務調査は教科書通りには進まない
おはようございます。東京・練馬の税理士、村田龍矢です。
今日は、税務調査は教科書通りには進まない、というお話。
卵が先か鶏が先か
税務調査で調査官と見解が対立した時。
対立点は3つに分けられます。
- 事実認定
- 法令解釈
- あてはめ
このどこかで納税者側と調査官の意見が合わない。
このうち、ほとんどは事実認定に関するものか、法令解釈に関するものか、どっちかという印象ですね。
さて、この事実認定と法令解釈。
どちらが先に来るものなのか?
いわゆる、「法的三段論法」から考えると、
あくまで事実認定が先。
事実関係をしっかり証拠に基づいて確認し、法令をあてはめていく。
セオリーでは、こういう順番になるのです。
が、私はどうも違和感を抱くのです。
税務調査の現場では、必ずしも事実認定が先に来るとは限らないのです。
自分に有利な事実認定をしてしまう
税務調査の場合、シチュエーションが特殊なように思います。
事実に関して、お互いが持てる証拠を繰り出して固めていく。
その際に、自分に有利なように証拠を出していくわけですが、
それを客観的に検証してくれる存在はいないわけです。
裁判であれば、原告と被告がいて、公正な裁判官がジャッジする。
税務調査では、当事者である納税者と調査官でお互いの主張をぶつけ合って、
証拠を繰り出して自分の主張を通そうとする。
なんでこんなことをしているのか?
お互いが有利になるように法令へのあてはめをしたいからですね。
ひいては、自分に有利になるような法令を持ち出してそこにあてはまるような証拠を出して事実関係を固めたい、と。
つまり、純粋な事実認定をしているというよりも、
お互いがお互いの有利になるような事実を固めたい、
そのためにどんな証拠を出していくのか?
それは、以降に控える法令解釈とあてはめを意識して行うわけです。
行ったり来たり
事実認定→法令解釈→あてはめ
という順番通りではなく、
「こういう法令に当てはまるような事実関係を固めたい」
という意思が働くのです。
法令解釈が先だって、そこに沿うような事実認定ができる証拠を出していく。
納税者と調査官のディスカッションを通じて、
法令解釈について議論を進めつつ、
事実認定についてお互いが持てる証拠を出して事実を固める。
そして、固まった事実と法令解釈に基づいてあてはめ・・・と思いきや、
少しでも有利な状況に持ち込みたい側が新たな証拠を突き出して、
事実認定をやり直す。
場合によっては法令解釈を再度、行うこともある。
そして、税務調査の現場では、
裁判官という公正な存在はいないので、
「妥協」という新たな要因も加わる。
私の個人的な税務調査でのディスカッションの進め方ですが、
まず「法令解釈」を行い、こういう法令で課税したいor課税を逃れたいという「思惑」が存在し、
そこに証拠を持ち寄って事実認定を固めていく。
↓
固まった事実に基づいて法令へのあてはめを行うも、場合によっては新たな証拠が出現して振り出しに。
↓
お互いが法令解釈を軌道修正し、もう一度新たな証拠に基づいて事実認定。
↓
完全にあてはめができれば、ディスカッション終了。
あるいは、
あてはめを行ったところ、事実認定が不十分なためディスカッションが終わらない。
↓
双方の合意のもとに「事実認定」を妥協。
ディスカッションが終了し、妥協して事実認定に基づいて法令へのあてはめ。
という感じかなと。
証拠が完全に揃っていて、スカッと勝利!
という展開なんてほとんどなくて、
お互いの証拠が決定打になりえないことなんてよくあります。
このような場合に事実認定の妥協が行われ、これを世間では「調査官との交渉」と呼ぶのでしょう。
ここで誤解していただきたくないのは、この妥協は「負け」ではないということ。
裁判官という公正な第三者がいない場において、
いかに納税者にとって有利な妥協点を探ってそこに落とし込んでいくか。
これをコントロールできる力が「調査対応に強い」ということなのでしょう。
税務調査の現場は、教科書通りにはなかなか進まないのです。
こういう法令にあてはめたいという調査官の思惑が先行し、そこに沿った事実認定を固めようとしてくる。
非常に危険な場になりうる。
教科書通りで決着してくれるなら話が速くてお互い助かるのですが。
だからこそ、こういう泥臭い現場を知った専門家があなたの盾になる必要があるのです。
調査官の思惑を読み解き、最善な妥協に導く。
そのために、税理士がいるのです。
【編集後記】
昨日は午前中はブログ更新と自重トレーニング。
午後からは事務所の月次決算。
