知っているからこそ、話せない
おはようございます。東京・練馬の税理士、村田龍矢です。
今日は、知っているジレンマについて。
簡単なことなのに、答えられない?
以前、とあるポータルサイトで税金や会計についての質問に回答をしていたことがありました。
基本的なことから、結構複雑な質問まで、多種多様な質問が並んでいました。
ずらっと並んだ質問のうち、自分が答えられそうな質問に回答を入力していく形式なのですが、
どうしても回答が長文になりがちです。
お相手は匿名、こちらは実名、という立場の差もありますが、質問文から読み取れる情報量があまりにも少ないケースが多いのです。
そうしますと、こちらとしては色んな背景情報を推測して回答することになり、どうしても慎重になりますね。
例えば税金で言うと、
「所得税の基礎控除はいくらですか?」という質問に対する答え。
48万円です、
というのは間違いです。
今の制度では、納税者本人の所得金額によって基礎控除の金額が減少していく仕組み。
正確に答えようと思えば、
納税者本人の所得金額によって場合分けを行った回答が必要になります。
さらに言うと。
「納税者本人の所得金額」も大事な考え方で、
一言でズバッと回答できるような質問ではないのです。
ジレンマ
逆に、持ってる知識が少ない場合は、とてもラクですよね。
所得税の基礎控除は?と聞かれたら、48万円です、と答えることができるので。
なまじ勉強して色んな知識や経験を身に着けているからこそ、
その質問に対する色んなパターンを想定してしまって、うかつに回答できなくなるのです。
目の前にクライアントがいらっしゃるのであれば、回答に必要な情報を得るためにこちらから質問することもできますが、
そうでないような場合だと、クライアントの状況を推測して、色んな場合分けの回答をすることになってしまいます。
こうなりますと、そりゃどうしても回答文は長くややこしくなってしまう。
その回答を見た方は、この税理士は何を言っているのかわからん、となる。
このあたり、税理士に限らず専門的なお仕事をされている方には、当該分野の知識経験のみならず、高度なコミュニケーション能力も必要になると痛感しています。
自分が回答するために必要な情報を相手から的確に引き出しつつ、そのために相手が的確に答えてくれそうな質問内容で問いかけ、尋問みたいにならないように気を付ける、というように。
あるいは、「この税理士は専門家のクセに、こんな簡単な質問にもすぐに答えてくれないのか」と思われながら。
コミュニケーション能力のテストは、税理士試験ではありませんからね。
資格取得とは別に、高めていく必要があるのです。
まだ、学び足りないという不安
物事を学んで、知識を身に着ける。
それを実務で活用すると、知らなかったこと学びたいことが次から次へと出てきます。
そうすると、まだ足りない、ともっともっと勉強に時間と労力を割くようになってしまいます。
これが行き過ぎると、勉強が足りないので行動をしない、となってしまう。
ここは、ある程度割り切るしかないでしょう。
大事なことは、知らないモノに出会った時、それをどうやって解明していくのか、どうやって情報を集めていくのか。
手段を自分なりに持っていることではないでしょうか。
普段から、自分の専門分野についての学びを進めつつ、
こういうことならあの書籍を調べればいいとか、あの文献を読んでみるかとか、
なんだったら、質問できる知り合いがいるでもいい。
「それ知らない。どうしよう」となるから不安になるのであって、
対応策を自分なりに用意できているだけで不安はかなり軽減されるはず。
専門職を選んだ以上、
知っているからこそ、言えないというジレンマ
知れば知るほど、自分が学び足りないことがわかってしまうジレンマ
この2つのジレンマは宿命みたいなものです。
付き合い方をそれぞれ、考えましょう。
【編集後記】
昨日は朝一のブログ更新。
午後からクライアントと打ち合わせの日程調整。オンライン面談の準備など。
夕食後は、三國無双とモンハンを。